2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧
Key words;十力の金剛石,国際信号旗,野ばら 『十力の金剛石』(1921年)には王子と大臣の子の2人の少年が登場する。王子は,2人で自分の持っているルビーよりももっといい宝石を探しに森へ出かける。しかし,「サルトリイバラ」が王子の着物に鉤(かぎ…
溶液の酸性度を測る指示薬にリトマス試験紙というのがあります。青色のリトマス試験紙が赤に変色すれば酸性,逆に赤が青に変色すればアルカリです。今では殆ど使われませんが,先生の目を盗んで,身の回りの物の酸性度を手当たり次第測定した理科の授業が懐…
神奈川県立大磯城山公園およびその周辺で,たくさんの自生植物や植栽植物を観察することができる。その中には,イソギク,ハコネウツギ,ガクアジサイ,オオバヤシャブシ,クゲヌマランなどのフォッサ・マグナ要素の植物という他の地域では見られないものも…
ミカン科の落葉低木である「サンショウ」(Zanthoxylum piperitum;第1図)は,香辛料の代表的なものであるが健胃剤としても有名である。漢方薬でもっとも使われるものに「大建中湯」がある。便秘あるいは術後イレウスの予防などに使う。しかし,「サンショ…
Key words:コブシ,マグノリア 宮沢賢治に『マグノリアの木』(1923年)という短編の作品がある。仏教の教えに基づいて書いたものとされている。その内容は,諒安(りょうあん)という人(お坊さん?)が霧のかかった険しい山谷を歩いていて,やっと平らな…
賢治は,地質時代(古生代,中生代)という太古の植物や動物を扱った作品を数多く残している。中でも,『春と修羅(第二集)』の「「春」変奏曲」(1924.8.22 ;1933.7.5)という古代シダを扱った詩(心象スケッチ)がとてもユーモラスであり,また同時に賢…
大きな緑色のカラスウリの実(長さ7~8cm)を用意し,ナイフで端を切りおとす。切られた端から中身をナイフあるいは小さなスプーンで薄皮になるまで丁寧にかき出す。中身はほとんどが種で容易に取り出せる。 次に木の台座を用意し,その中心に小さな蝋燭…
Key words:実をくり抜いて作った燈籠(とうろう) 『銀河鉄道の夜』は,夢の中で「みんなのほんたうのさいはひ」を求めて銀河宇宙を旅する話だが,サクラ,カラスウリ,イチイなど30種ほどの植物が登場してくる。このうち,「カラスウリ」を使った「烏瓜の…
Key words:ギンリョウソウ,共産主義,オキナグサ,赤旗(せっき),山の鞍部,幽霊草 1.サキノハカといふ黒い花 詩ノートの〔サキノハカといふ黒い花といっしょに〕は,「サキノハカといふ黒い花といっしょに/ 革命がやがてやってくる /ブルジョアジー…
カテゴリー;『銀河鉄道の夜』(種々) 1.宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-文学と植物のかかわり- 2.宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-鳥の押し葉- 3.宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-農業(1)- 4.宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-農業(2)- 5.宮沢賢治…
Key words:文学と植物のかかわり,発想の原点,ほんとうの幸,自己犠牲,近代科学,三角標,楊 ジョバンニが夢から覚める時に見た「赤い腕木」を持つ2本の「電信ばしら」は,「A」の形をした高圧送電線用の「電力柱」の可能性が高いと思われる。しかし,な…
Key words:文学と植物のかかわり,ケヤキ,近代科学,高圧送電線用A柱,三角標,スギ,擲弾兵(てきだんへい) 童話『銀河鉄道の夜』の最終章(ジョバンニの切符)で,ジョバンニは死んだ親友のカムパネルラと夢の中で天上を旅し,「みんなのほんとうの幸(…
童話『銀河鉄道の夜』は,造語などによって発生する事物としての謎や,言葉がよく知られたものでも意味が取りにくいもの(機能・役割としての謎)が多く,作品を理解させることを難しくさせている。鈴木(1994)によれば,謎の多さが解釈の多様さを呼び,結…
前稿に続き,賢治の農業に対する考えと現代日本の農業と人との関わりについて考察してみたい。本編のキーワードは米(稲作)である。 1.幻想第四次元空間での稲作農業 賢治が夢見た理想の農業とはどういうものであったのだろうか。『銀河鉄道の夜』の最終…
賢治は,大正7年(1918)に盛岡高等農林学校(現岩手大学農学部)を卒業して研究生となる。2年後に指導教官(関豊太郎教授)から助教授に推薦されるが辞退する。翌年の11月に稗貫(ひえぬき)農学校 ( 現在の岩手県立花巻農業高等学校 )の教諭になる。しか…
「鳥の押し葉」という言葉が『銀河鉄道の夜』の「八,鳥を捕る人」で登場してくる。「花の押し花」や「葉の押し葉」は,聞いたことがあるが,「鳥の押し葉」の存在は『銀河鉄道の夜』で初めて知った。賢治は,たくさんの造語を作ったが,「鳥の押し葉」はな…
Key words:銀河鉄道の夜,烏瓜,なでしこ,植物,つりがねそう,楊 はじめに 童話『銀河鉄道の夜』(第四次稿)には30種ほどの植物が登場する(第1図)。賢治の作品に登場する植物は,単に風景描写とは言えないものが少なくない。今回,『銀河鉄道の夜』で…
Key words:文学と植物のかかわり,竜胆,芝草,すゝき,源氏物語,野菊の墓 『銀河鉄道の夜』は,読書以外に,映画(アニメ,実写),ミュージカル,プラネタリウム版などでも楽しむことができる。中でも,プラネタリウム版は従来の光学的投影装置ではなく…
前報で『銀河鉄道の夜』の主人公(ジョバンニとカムパネルラ)を紹介した(石井,2013)ので,本稿では脇役の子供たちを紹介する。一人は,氷山と衝突して沈没した船の乗客タダシで,もう一人はジョバンニと同級生のザネリである。 二人とも水難事故に遭遇す…
前稿「幻の匂い」を執筆したとき,理解できずに私の心に強く残ったものがあった。それは,なぜジョバンニとカムパネルラが同時に同じ気配と予知を伴った「幻嗅」を体験したのかということである。2人は,友人という以外に何かあるのだろうか。カムパネルラ…
Key words:文学と植物のかかわり,源氏物語,実体的意識性,気配,三木成夫,予知 前稿では,『銀河鉄道の夜』第二次稿から登場してくる「苹果(りんご)」や「野茨」の「匂い」を,嗅覚過敏や幻嗅で説明しようとしたが十分説明しきれなかった。今回,『銀河…
Key words:文学と植物のかかわり, 苹果,野茨,ばら,共感覚,幻嗅 「匂い」が快感や不快感を誘起したり, 食欲増進やリフレッシュ効果(リラックス効果)をもたらしたりすることはよく知られている。これら「匂い」や「香り」の特質から,「匂い」は教育,…
前稿では,ジョバンニの家の前に植えられてある「アスパラガス」と「ケール」が,仏教だけでなくあらゆる宗教の宗派や教派の「死後の世界」を統一する「五輪塔」をイメージできると報告した。しかし,賢治にとって,全ての宗教の「死後の世界」や「理念」を…
童話『銀河鉄道の夜』(第四次稿)には,「アスパラガス」が2回登場する。1つは,第四章の時計屋にある黒い星座早見を飾る「アスパラガスの葉」として,そしてもう1つは第三章のジョバンニが住んでいる家の入口近くにある空き箱の中の「ケール」と一緒に…
Key words: 文学と植物のかかわり,薄明窮,鐘,キキョウ科,教会堂,乳液,送電鉄塔 童話『銀河鉄道の夜』(第四次稿)には,天上世界の空の色を「桔梗色」と表現している箇所が4つある。賢治は,物語の地上世界の景観に現れる空を「鋼青の空」と記載して…