宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

因果交流電燈の青い照明はASD的思考と関係する

詩集『春と修羅』の「序」(1924.1.20)の出だしは,「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)/風景やみんなといつしよに/せはしくせはしく明滅しながら/いかにもたしかにともりつづけ…

賢治は雲からレモンの匂いを感じることができる

詩集『春と修羅』(第二集)の「早池峰山巓」(1924.8.17)にミカン科のレモンの匂いが登場する。賢治が農学校の教師時代に詠ったものである。 「・・・九旬にあまる旱天(ひでり)つゞきの焦燥や/夏蚕飼育の辛苦を了へて/よろこびと寒さとに泣くやうにし…

賢治の感覚過敏,特にバラ科の植物の「匂い」に敏感(2)

バラ科リンゴ属のリンゴ(苹果;Malus domestica)の果実の匂いも賢治作品にはたくさん登場する。ただし,多くは「幻嗅」である。 詩集『春と修羅』(第一集)の「靑森挽歌」(1923.8.1)に「・・・半月の噴いた瓦斯でいつぱいだ/巻積雲のはらわたまで/…

賢治の感覚過敏,特にバラ科の植物の「匂い」に敏感(1)

自閉スペクトラム症(ASD)の特性の一つとして感覚過敏がある。特定の感覚の刺激を過剰に強く感じてしまうことである。賢治はとくに「匂い」に過敏であると思われる。医師で親友でもある佐藤隆房(2000)の著書に花巻農学校教師時代の感覚過敏に関するエピソ…

米津玄師は泣いている人に独特な匂いを感じる,賢治はどうか

シンガーソングライターである米津玄師(1991~)は,以前「泣いてる人って独特の匂いがするんだけど,誰に言っても共感してくれない。」(2012.2.7)とツイートしていた。泣いている人の「涙」から匂い物質でも発散していたのであろうか。しかし,血液の…

賢治の「共感覚」の世界,ASD的資質との関係 

「共感覚」(シナスタジア)とは,ある感覚刺激を受けたときに,別の感覚が引き起こされる現象のことである。「共感覚」は五感のような感覚だけではなく,感情や単語や数などに関して起こることもある。文字に色を感じたり,音に色を感じたり,味や匂いに,…

賢治が多用するオノマトペ(擬音)はASD的な資質と関係があるのか

賢治は,作品にたくさんのオノマトペ(擬音)を入れることで知られている。童話『十力の金剛石』(1921 or 1922)でも,天然物,動物,植物とさまざまな物に擬音が使われている。普通,物が動くとき音を発する。時計が時を刻むとき,実際そのように聞こえる…

推敲魔である賢治,ASD的な資質の関与

賢治は推敲魔(すいこうま)として知られている。例えば,長詩である「小岩井農場」(8082字)は詩集『春と修羅』の目次にある日付大正11年(1922)年5月21日に心象スケッチしたものを基に創作されたものであるが,詩集として発表する日である大正13年(1924…