宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『歯車』の「銀色の翼」が幻視された時代的背景を同世代の賢治の手紙と作品から読み取る (2)

賢治は,「業の花びら」の出てくる詩「「三一四〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕」(1924.10.5)を書いた翌年に「生徒諸君に寄せる」という詩を書いている。未完成の詩である。その詩の〔断章五〕には「 サキノハカ・・・・・来る/それは一つの送られ…

『歯車』の「銀色の翼」が幻視された時代的背景を同世代の賢治の手紙と作品から読み取る (1)

前稿で私は『歯車』の主人公の瞼の裏に幻視した「銀色の翼」つまり「イカロスの翼」のようなものが,賢治の幻視した「業の花びら」と同種のものであり,またこれら幻覚が宗教を軽んじたことによる「慢心の罰」によって現れるものであると推論した(石井,202…

『歯車』の主人公と賢治が慢心の罰で幻視したものをまとめてみる (14)

これまで13回に渡って,『歯車』の主人公が暗い瞼の裏に幻視した「銀色の翼」が賢治の夜空に幻視した「暗い業の花びら」と同種のものかどうか比較検討してきた。比較項目は1)幻視したものとその正体,2)罪とその理由,3)罰と罰したもの,4)罰したも…

宮沢賢治の文学は芥川と同じように敗北したか -「敗れし少年の歌へる」から-(13)

芥川龍之介は「銀の翼」を登場させた『歯車』と同じ年に書いた『或阿呆の一生』(1927)の最終章51で自分の生涯を「敗北」とみなした。また,共産党の指導者にもなった宮本顕治は芥川の文学を「敗北の文学」とした(石井,2024a)。一方,賢治は「業の花びら…