宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

童話『やまなし』考-幕末・明治・大正期の岩谷堂と人首はどんな処だったのか(第2稿)-

本稿では幕末・明治・大正期の「岩谷堂」や「人首」の精神風土について考察する。 「岩谷堂」は前稿で述べたように幕末まで北上川の舟運や陸路交通の要衝として栄え江刺郡の中心地であった(石井,2023)。しかし,「岩谷堂」の繁栄も明治5年(1872)に納米…

童話『やまなし』考-幕末・明治・大正期の岩谷堂と人首はどんな処だったのか(第1稿)-

童話『やまなし』第二章「十二月」に,兄弟の〈蟹〉が吐く泡の大きさを争っていると父親が「もうねろねろ。遅いぞ,あしたイサドへ連れて行かんぞ。」と注意する場面がある。「イサド」とはどのようなところなのだろう。文献等で調べたら「イサド」は岩手県…

詩「蠕虫舞手」考-水ゾルとは何か,そしてなぜ詩の最初にだしたのか-

宮沢賢治の詩「蠕虫舞手」(1922.5.20)は以下の詩句で始まる。 (えゝ 水ゾルですよ おぼろな寒天(アガア)の液ですよ) 日は黄金(きん)の薔薇 赤いちいさな蠕虫(ぜんちゆう)が 水とひかりをからだにまとひ ひとりでをどりをやつてゐる (えゝ 8(エ…

詩「蠕虫舞手」考-なぜ賢治は蠕虫にアンネリダのルビを振ったのか-

「蠕虫」のルビをドイツ語読みにしたいなら「ウオーム」(Wurm」としなければならない。また,ルビの「アンネリダ」が正しいのなら「蠕虫」は「環虫」にしなければならないように思われる。なぜなら「アンネリダ」(Annelida)は生物学的には環形動物門のこ…

詩「蠕虫舞手」考-燐光珊瑚の環節に正しく飾る真珠のぼたんとは何か-

宮沢賢治の詩「蠕虫舞手」(1922.5.20)に「赤い蠕虫(アンネリダ)舞手(タンツエーリン)は/とがつた二つの耳をもち/燐光珊瑚の環節に/正しく飾る真珠のぼたん/くるりくるりと廻つてゐます/(えゝ 8(エイト)γ(ガムマア)e(イー)6(スイツク…