宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

童話『やまなし』の第二章「十二月」に登場する赤いと思われる「やまなし」の実も「怒り」と関係があるのか

童話『やまなし』で谷川の川底に棲む〈蟹〉の〈魚〉への「怒り」あるいは「反感」は,第一章「五月」では谷川に飛び込んでくる〈カワセミ〉の「赤い眼」として表現されていた。第二章「十二月」では〈カワセミ〉ではなく,「やまなし」の実が月夜の晩に「ド…

童話『やまなし』の第一章「五月」に登場する〈カワセミ〉の眼は黒いはずなのになぜ赤いと言うのか

童話『やまなし』の第一章「五月」は,これまで谷川に棲む生き物(蟹,魚,クラムボン,かはせみ)の弱肉強食の生存競争や食物連鎖がメインテーマとして描かれていると考えられてきた。しかし,私は谷川を舞台にして,よそ者と先住土着の生き物の争いが描か…

童話『やまなし』に登場する「やまなし」が「イワテヤマナシ」である可能性について (2)

前稿で,童話『やまなし』に登場する「やまなし」がバラ科ナシ属の「イワテヤマナシ」であることで矛盾はないが,バラ科リンゴ属の「オオウラジノキ」を否定するものでもないということを記載した。「やまなし」が「イワテヤマナシ」と「オオウラジロノキ」…

童話『やまなし』に登場する「やまなし」が「イワテヤマナシ」である可能性について (1)

「イワテヤマナシ」(Pyrus ussuriensis Maxim.var.aromatica (Nakai et Kikuchi))Rehd.)は,童話『やまなし』の第二章「十二月」に登場する「やまなし」の有力な候補としてあげられている(伊藤,2007;片山,2019)。私も,「イワテヤマナシ」と同属…

童話『やまなし』考 -12月に樹上に残る「ヤマナシ」(Pyrus pyrifolia )の実-

童話『やまなし』の第二章「十二月」で「やまなし」の実が谷川に「ドブン」と落ちてくる。これは,『やまなし』の舞台となっている谷川では,12月でも樹上に「やまなし」の実が残っていることを意味する。 現在,日本列島には果樹園で栽培されるナシを除き,…