宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

宮沢賢治の詩「蠕虫舞手」に登場するナチラナトラのひいさまはどんなお姿をしているのか

水の中で踊る「ナチラナトラのひいさま」はどんな生き物がイメージされているのだろうか。詩の中で,この生き物は「赤い小さな蠕虫」と表現されている。「蠕虫」には「アンネリダ」のルビが振られていて,体には青白い光を放つ「環節」があり,「とがった二…

宮沢賢治の詩「蠕虫舞手」に登場する「8(エイト)γ(ガムマア)e(イー)6(スイツクス)α(アルフア)」とは何か

詩「蠕虫(アンネリダ)舞手(タンツェーリン)」(1922.5.20)の前半の詩句は以下のようなものである (えゝ 水ゾルですよ おぼろな寒天(アガア)の液ですよ) 日は黄金(きん)の薔薇 赤いちいさな蠕虫(ぜんちゆう)が 水とひかりをからだにまとひ ひと…

童話『やまなし』考-ラムネの瓶の月光とは何か-

童話『やまなし』には難解な用語が多い。「ラムネ瓶の月光」というのもその一つである。 そのつめたい水の底まで,ラムネの瓶(びん)の月光がいつぱいに透(すき)とほり天井では波が青じろい火を,燃したり消したりしてゐるやう,あたりはしんとして,たゞ…

童話『やまなし』考-川底に流れてくる水晶や金雲母にどのような意味が込められているのか-

童話『やまなし』の第二章「十二月」は以下の文章で始まる。 蟹の子供らはもうよほど大きくなり,底の景色も夏から秋の間にすっかり変りました。 白い柔かな円石もころがつて来,小さな錐(きり)の形の水晶の粒や,金雲母(きんうんも)のかけらもながれて…

宮沢賢治の童話『二十六夜』に登場する爾迦夷(るかい)とは誰か

本稿では童話『二十六夜』に登場する捨身菩薩・疾翔大力の弟子である〈爾迦夷〉が誰をイメージして創作されているのかについて考察する。童話で梟(ふくろう)の坊さんは〈爾迦夷〉を以下のように説明している。 爾迦夷といふはこのとき我等と同様梟ぢゃ。わ…

童話『二十六夜』考-梟の子である穂吉の左脚に結ばれた「赤い紐」は運命の「赤い糸」か-

童話『二十六夜』はガチガチの宗教的な読み物のように見えるが,童話『やまなし』や寓話『シグナルとシグナレス』で見られるような悲恋物語も入れてある。すなわち,童話『二十六夜』は梟(ふくろう)の子である穂吉と人間の子の悲恋物語である。穂吉は3人…