宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

サガレンと八月

宮沢賢治の詩に登場する「暗い業の花びら」の意味を明らかにする(3)-ボードレールの「悪の華」との類似点から-

本稿(第3稿)は下書稿の「業の花びら」に記載されている「暗い業の花びら」が何を意味しているかを,詩の表題が類似するボードレールの詩集を読み込むことから考察する。 フランスの象徴主義の詩人であるボードレール(Charles-Pierre Baudelaire;1821~186…

童話『やまなし』考-蟹の母が子の行動に対して禁止したもの(試論 第2稿)-

前稿で,タネリが「南」の空を「くらげ」の「めがね」で透かして見たものは大都会東京やアメリカのシカゴ,ニューヨークのような伝統が破壊され自由を謳歌できる世界であり,「悪いもの」とは「南」にある別の世界であることを述べた。しかし,「くらげ」の…

童話『やまなし』考-蟹の母が子の行動に対して禁止したもの(試論 第1稿)-

童話『やまなし』(1923.4.8)に登場する〈蟹〉は父親と兄弟の子供しか登場しない。1971年に宮沢賢治研究会の例会で,なぜ母親が出てこないのかについて健在説,一時的不在説,入院説,死亡説という4つの見解が出され議論されていた(福島,1971)。私は…