宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

銀河鉄道の夜(三角標)

ASDの人は光や砂や水が好き,つまり植物のようだ,賢治もそうか

自閉スペクトラム症(ASD)の特性をもつ東田直樹の著書に植物に関して以下のような記載がある。 自閉症者が光や砂,水が好きなことはよく知られています。僕は,自閉症者には,植物と同じような遺伝子が組み込まれているのではないかと思っています。植物は…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-アスパラガスとジョバンニの家(2)-

前稿では,ジョバンニの家の前に植えられてある「アスパラガス」と「ケール」が,仏教だけでなくあらゆる宗教の宗派や教派の「死後の世界」を統一する「五輪塔」をイメージできると報告した。しかし,賢治にとって,全ての宗教の「死後の世界」や「理念」を…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-アスパラガスとジョバンニの家(1)-

童話『銀河鉄道の夜』(第四次稿)には,「アスパラガス」が2回登場する。1つは,第四章の時計屋にある黒い星座早見を飾る「アスパラガスの葉」として,そしてもう1つは第三章のジョバンニが住んでいる家の入口近くにある空き箱の中の「ケール」と一緒に…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-桔梗色の空と三角標-

Key words: 文学と植物のかかわり,薄明窮,鐘,キキョウ科,教会堂,乳液,送電鉄塔 童話『銀河鉄道の夜』(第四次稿)には,天上世界の空の色を「桔梗色」と表現している箇所が4つある。賢治は,物語の地上世界の景観に現れる空を「鋼青の空」と記載して…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-楊と炎の風景(2)-

『銀河鉄道の夜』にはたくさんの「三角標」が登場してくるが,それぞれの「三角標」に対するイメージは,物語の場面で異なる(石井,2014)。地上にある時計屋の星座早見を飾っていた三角形の「アスパラガスの葉」が天上で「三角標」に変るのだが,その「三…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-楊と炎の風景(1)-

『銀河鉄道の夜』の中で「蝎(さそり)」の「まっ赤な火」(「蝎」の逸話 )と「楊(やなぎ)の木」が一緒に登場する場面は,物語の最大の山場であり核心部分である。「楊の木」は,マッチの軸木に使われるヤマナラシなどの植物で,その使われ方が『法華経』…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-赤い実と悲劇的風景(2)-

前稿では,童話『銀河鉄道の夜』の九章「ジョバンニの切符」で登場してくる「橄欖の森」の「まっ赤に光る円い実(赤い実)」を便宜的に「リンゴの実」とし,この「赤い実」が「瞳」のメタファーになっていることを報告した。また,賢治はこの「赤い実」=「…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-赤い実と悲劇的風景(1)-

『銀河鉄道の夜』は,夢の中で主人公のジョバンニと水死したカムパネルラが銀河鉄道の列車に乗って天上(死後の世界)を旅する物語である。最初に到着する天の野原には,南欧(イタリア)を彷彿させるロマネスクやゴシック様式の教会堂(=三角標)と光り輝…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-光り輝くススキと絵画的風景(2)-

童話『銀河鉄道の夜』において,ジョバンニたちが最初に到着する天の野原は,天上世界の中では最も美しい場所である。本稿は,前稿に引き続き,天の野原に登場する光輝く植物(ススキ)と建造物について考察する。建造物のうち,「三角標」に関してはそれが…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-光り輝くススキと絵画的風景(1)-

『銀河鉄道の夜』では,夢の中でジョバンニとカムパネルラが黒い丘から銀河鉄道の列車に乗り込んで天上世界に旅立つ。最初に到着する天の野原には,紫色の細かな波をたてたり虹のようにきらっと光ったりする青白く光る銀河が流れ,月長石ででも刻まれたよう…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-星座早見を飾るアスパラガスの葉(2)-

前稿に続き,星座早見を飾るアスパラガスの葉が,観賞種であるアスパラガス属の「仮葉枝」ではなく,食用のアスパラガスの「三角形の鱗片葉」であるという私の見解について述べる。本稿では,賢治の創作した難解な「三角標」という言葉についても説明する。 …

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-星座早見を飾るアスパラガスの葉(1)-

『銀河鉄道の夜(四次稿)』四章の「ケンタウル祭の夜」に「青いアスパラガスの葉」が登場する。主人公のジョバンニは,学校で「黒い星座の図」を見ながら銀河とは何かについての授業を受けるが,帰宅後に母に牛乳が届いていないことを知り牧場に牛乳を取り…