宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

宮沢賢治の詩に登場する「暗い業の花びら」の意味を明らかにする(4)-教え子である柳原昌悦への手紙から-

前稿で詩「業の花びら」に記載されている「暗い業の花びら」は「慢心という業の報い(罰)を受けたときに現れる幻の花びらのこと」であると推論した。しかし,多くの賢治ファンは,菩薩に成りたかった賢治に「慢心」(傲慢)が生じることを認めたくないであ…

宮沢賢治の詩に登場する「暗い業の花びら」の意味を明らかにする(3)-ボードレールの「悪の華」との類似点から-

本稿(第3稿)は下書稿の「業の花びら」に記載されている「暗い業の花びら」が何を意味しているかを,詩の表題が類似するボードレールの詩集を読み込むことから考察する。 フランスの象徴主義の詩人であるボードレール(Charles-Pierre Baudelaire;1821~186…

宮沢賢治の詩に登場する「暗い業の花びら」の意味を明らかにする(2)-花びらは実際に見えていたのか-

前稿では,定稿「〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕」の下書稿で「業の花びら」という表題のついた詩の背後にあるものを解説した。本稿(第2稿)は「暗い業の花びら」という言葉を「暗い」,「業」,「花びら」の3つに分解してそれぞれの意味を考えて…

宮沢賢治の詩に登場する「暗い業の花びら」の意味を明らかにする(1)-詩の背後にあるものから

賢治の詩集『春と修羅 第二集』に「三一四〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕」(1924.10.5)という仮題がついた短い詩がある。夜の湿気と風がさびしくいりまじり/松ややなぎの林はくろく/そらには暗い業の花びらがいっぱいで/わたくしは神々の名を録…