宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

敗れし少年の歌へる

文語詩「敗れし少年の歌へる」考 -賢治は三陸で恋人に向かって謝罪したのか(試論)-

前稿で賢治が大正14年(1925)1月5日から9日にわたって三陸地方に旅行したのは,新しいことを始めるためなどの諸説はあるものの,恋人のいるアメリカにできるだけ近づき,アメリカに渡った恋人と重なる「ハイビャクシン」の前で謝罪するためだった可能性もあ…

詩「暁穹への嫉妬」に登場するハイビャクシンには賢治の恋人が重ねられている

前稿で賢治が詩「暁穹への嫉妬」(1925.1.6)を創作するときに「ハイビャクシン」に似た「ハマハイビャクシン」を見たということを述べた(石井,2024a)。しかし,「ハイビャクシン」にせよ,あるいは「ハマハイビャクシン」だったにせよ,なぜこのような…

賢治は文語詩「敗れし少年の歌へる」に登場する「びゃくしん」を実際に見たのか(2)

前稿で文語詩「敗れし少年の歌へる」に登場する植物は「びゃくしん」であったが,この文語詩の基になった詩「暁穹への嫉妬」には別の植物が記載されていたと述べた。 詩「暁穹への嫉妬」(1925.1.6)の後半部は「ぼくがあいつを恋するために/このうつくし…

賢治は文語詩「敗れし少年の歌へる」に登場する「びゃくしん」を実際に見たのか(1)

「びゃくしん」が文語詩「敗れし少年の歌へる」の「ひかりわななくあけぞらに/清麗サフィアのさまなして/きみにたぐへるかの惑星(ほし)の/いま融け行くぞかなしけれ/雪をかぶれるびゃくしんや/百の海岬いま明けて/あをうなばらは万葉の/古きしらべ…

賢治の詩「敗れし少年の歌へる」の原稿に書き込まれた落書き絵-翼を広げた鳥と魚-(試論 2)

思想家で賢治研究家の吉本隆明(2012)が,1996年6月28日に『賢治の世界』というタイトルで講演したとき,賢治の詩集『春と修羅』第一集は,難解であり「自分と自然とが一体になっちゃって溶け合っている状態を根本に置かないと」理解しがたく,それは「北…

賢治の詩「敗れし少年の歌へる」の原稿に書き込まれた落書き絵-翼を広げた鳥と魚-(試論 1)

本稿は未定稿文語詩「敗れし少年の歌へる」の原稿の余白に書き込まれた「翼を広げた鳥」と「魚」の線画が何であるのかと何のために書いたのかについて考察する。 第1図に「翼を広げた鳥」(A)と「魚」(B)を示す。「翼を広げた鳥」は「さながらきみのこと…

宮沢賢治の文学は芥川と同じように敗北したか -「敗れし少年の歌へる」から-(13)

芥川龍之介は「銀の翼」を登場させた『歯車』と同じ年に書いた『或阿呆の一生』(1927)の最終章51で自分の生涯を「敗北」とみなした。また,共産党の指導者にもなった宮本顕治は芥川の文学を「敗北の文学」とした(石井,2024a)。一方,賢治は「業の花びら…