宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧

文語詩「敗れし少年の歌へる」考 -賢治は三陸で恋人に向かって謝罪したのか(試論)-

前稿で賢治が大正14年(1925)1月5日から9日にわたって三陸地方に旅行したのは,新しいことを始めるためなどの諸説はあるものの,恋人のいるアメリカにできるだけ近づき,アメリカに渡った恋人と重なる「ハイビャクシン」の前で謝罪するためだった可能性もあ…

詩「暁穹への嫉妬」に登場するハイビャクシンには賢治の恋人が重ねられている

前稿で賢治が詩「暁穹への嫉妬」(1925.1.6)を創作するときに「ハイビャクシン」に似た「ハマハイビャクシン」を見たということを述べた(石井,2024a)。しかし,「ハイビャクシン」にせよ,あるいは「ハマハイビャクシン」だったにせよ,なぜこのような…

賢治は文語詩「敗れし少年の歌へる」に登場する「びゃくしん」を実際に見たのか(2)

前稿で文語詩「敗れし少年の歌へる」に登場する植物は「びゃくしん」であったが,この文語詩の基になった詩「暁穹への嫉妬」には別の植物が記載されていたと述べた。 詩「暁穹への嫉妬」(1925.1.6)の後半部は「ぼくがあいつを恋するために/このうつくし…

賢治は文語詩「敗れし少年の歌へる」に登場する「びゃくしん」を実際に見たのか(1)

「びゃくしん」が文語詩「敗れし少年の歌へる」の「ひかりわななくあけぞらに/清麗サフィアのさまなして/きみにたぐへるかの惑星(ほし)の/いま融け行くぞかなしけれ/雪をかぶれるびゃくしんや/百の海岬いま明けて/あをうなばらは万葉の/古きしらべ…