宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-カムパネルラの恋(3)-

Keywords: アイヌ神謡集,バルドラの野原,文学と植物のかかわり,カーバイド,化石,蠍の火,先住民,炭酸石灰,ウミサソリ,楊(やなぎ) 本稿(2)に続けて童話『銀河鉄道の夜』がいかにして生まれたかについて,この物語に登場する「バルドラの野原の一…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-カムパネルラの恋(2)-

Keywords: アイヌ神謡集,文学と植物のかかわり,インディアン,絹で包んだリンゴ,高原,涙ぐむ眼,先住民,種山ヶ原 童話『銀河鉄道の夜』の初期形第一次稿は,四次稿の4分の1程度の長さの物語であり,大きく分けると「橄欖の森」,「高原のインディアン…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-カンパネルラの恋(1)-

Keywords : アイヌ神謡集,アイリス,文学と植物のかかわり,蛇紋岩,橄欖(かんらん)の森,ミズバショウ,先住民,スギ,種山ヶ原,ヤマザクラ 賢治は,童話『銀河鉄道の夜』の中で「ほんたうにみんなの幸せのためなら僕のからだなんか百ぺん灼(や)いて…

植物から『銀河鉄道の夜』の謎を読み解く(総集編Ⅴ)-なぜカムパネルラは自分を犠牲にしてザネリを救ったのか-

Keywords: 赤い腕木の電信柱,文学と植物のかかわり,蝦夷,ヒバ,薤露青(かいろせい),鬼神,くじら,まっくらな巨きなもの,澪標(みおつくし),石炭袋 本稿では,総集編Ⅲと総集編Ⅳに引き続き植物によって解き明かされた難解な用語について総説する。 …

植物から『銀河鉄道の夜』の謎を読み解く(総集編Ⅳ)-橄欖の森とカムパネルラの恋-

Keywords: 赤い実,粟粒ぐらいの活字,文学と植物のかかわり,蝦夷,イチョウ,薤露青,ケヤキ,リンドウ,スギ,渡り鳥の信号手 本稿では,総集編Ⅲに引き続き,植物によって解き明かされた難解な用語について総説する。また,詩集『春と修羅 第二集』の「…

植物から『銀河鉄道の夜』の謎を読み解く(総集編Ⅲ)-天気輪の柱と三角標-

Keywords: 赤い点々を打った測量旗,アスパラガス,文学と植物のかかわり,五輪塔,河原なでしこ,かはらははこぐさ,絹で包んだ苹果,にはとこのやぶ,鳥の押し葉,鳥を捕る人,瓜に飛びつく人達, 童話『銀河鉄道の夜』は,「ほんたうのさいはひ」が何か…

植物から『銀河鉄道の夜』の謎を読み解く(総集編Ⅱ)-リンゴの中を走る汽車-

Keywords: 文学と植物のかかわり,臨死体験,鉄の船,宙に浮く汽車,夢の橋 童話『銀河鉄道の夜』(第一次~第四次稿)に登場する汽車は宙に浮いて銀河の中を走る。このファンタスチックな夢の中の汽車には「リンゴ」の匂いも漂っている。本稿では,なぜ宙…

植物から『銀河鉄道の夜』の謎を読み解く(総集編Ⅰ)-宗教と科学の一致を目指す-

Keywords: 文学と植物のかかわり,ほんたうの考え・うその考え,移住者,烏瓜のあかり,みんなのほんたうのさいはひ,もみや楢で包まれた街燈,理想の農業,先住民,進化論,神話,唯物史観 童話『銀河鉄道の夜』には30種程の植物(第1図)が登場するが,…

宮沢賢治の『ひのきとひなげし』に登場する葵の花壇は『源氏物語』を参考にしている

賢治の童話『ひのきとひなげし』(最終形)は,美を競って「スター」に成りたがっている〈ひなげし〉が自分たちの大切な「亜片」(阿片あるいはアヘンのこと)を悪魔に騙(だま)し取られそうになる物語である。〈ひなげし〉は〈ひのき〉によって危うく難を…