宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

「烏瓜のあかり」とは何か

Key words:実をくり抜いて作った燈籠(とうろう) 『銀河鉄道の夜』は,夢の中で「みんなのほんたうのさいはひ」を求めて銀河宇宙を旅する話だが,サクラ,カラスウリ,イチイなど30種ほどの植物が登場してくる。このうち,「カラスウリ」を使った「烏瓜の…

賢治作品に登場する謎の植物-サキノハカとクラレの花-

Key words:ギンリョウソウ,共産主義,オキナグサ,赤旗(せっき),山の鞍部,幽霊草 1.サキノハカといふ黒い花 詩ノートの〔サキノハカといふ黒い花といっしょに〕は,「サキノハカといふ黒い花といっしょに/ 革命がやがてやってくる /ブルジョアジー…

『銀河鉄道の夜』を植物から読み解くシリーズの目次

カテゴリー;『銀河鉄道の夜』(種々) 1.宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-文学と植物のかかわり- 2.宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-鳥の押し葉- 3.宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-農業(1)- 4.宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-農業(2)- 5.宮沢賢治…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-赤い腕木の電信柱が意味するもの(2)

Key words:文学と植物のかかわり,発想の原点,ほんとうの幸,自己犠牲,近代科学,三角標,楊 ジョバンニが夢から覚める時に見た「赤い腕木」を持つ2本の「電信ばしら」は,「A」の形をした高圧送電線用の「電力柱」の可能性が高いと思われる。しかし,な…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-赤い腕木の電信柱が意味するもの(1)

Key words:文学と植物のかかわり,ケヤキ,近代科学,高圧送電線用A柱,三角標,スギ,擲弾兵(てきだんへい) 童話『銀河鉄道の夜』の最終章(ジョバンニの切符)で,ジョバンニは死んだ親友のカムパネルラと夢の中で天上を旅し,「みんなのほんとうの幸(…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-赤い点々を打った測量旗とは何か-

Key words:文学と植物のかかわり,宝石,近代科学,国際信号旗,レーザー,ラズベリー,ルビー,三角測量 童話『銀河鉄道の夜』は,造語などによって発生する事物としての謎や,言葉がよく知られたものでも意味が取りにくいもの(機能・役割としての謎)が…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-農業(2)-

Key words:文学と植物のかかわり,米,理想の農業,植物工場 前稿に続き,賢治の農業に対する考えと現代日本の農業と人との関わりについて考察してみたい。本編のキーワードは米(稲作)である。 1.幻想第四次元空間での稲作農業 賢治が夢見た理想の農業…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-農業(1)-

Key words:文学と植物のかかわり,イタリア,農業,たうもろこしの木 賢治は,大正7年(1918)に盛岡高等農林学校(現岩手大学農学部)を卒業して研究生となる。2年後に指導教官(関豊太郎教授)から助教授に推薦されるが辞退する。翌年の11月に稗貫(ひ…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-鳥の押し葉-

Key words:文学と植物のかかわり,かはらははこぐさ,鳥の押し葉 「鳥の押し葉」という言葉が『銀河鉄道の夜』の「八,鳥を捕る人」で登場してくる。「花の押し花」や「葉の押し葉」は,聞いたことがあるが,「鳥の押し葉」の存在は『銀河鉄道の夜』で初め…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-文学と植物のかかわり-

Key words:銀河鉄道の夜,烏瓜,なでしこ,植物,つりがねそう,楊 はじめに 童話『銀河鉄道の夜』(第四次稿)には30種ほどの植物が登場する(第1図)。賢治の作品に登場する植物は,単に風景描写とは言えないものが少なくない。今回,『銀河鉄道の夜』で…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-「りんだうの花」と悲しい思い-

Key words:文学と植物のかかわり,竜胆,芝草,すゝき,源氏物語,野菊の墓 『銀河鉄道の夜』は,読書以外に,映画(アニメ,実写),ミュージカル,プラネタリウム版などでも楽しむことができる。中でも,プラネタリウム版は従来の光学的投影装置ではなく…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-「にはとこのやぶ」と駄々っ子-

Key words:文学と植物のかかわり,檜,ひば,ニワトコ. 前報で『銀河鉄道の夜』の主人公(ジョバンニとカムパネルラ)を紹介した(石井,2013)ので,本稿では脇役の子供たちを紹介する。一人は,氷山と衝突して沈没した船の乗客タダシで,もう一人はジョ…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-イチョウの木と二人の男の子-

Key words:文学と植物のかかわり, ギリシャ神話,イチョウの生殖メカニズム 前稿「幻の匂い」を執筆したとき,理解できずに私の心に強く残ったものがあった。それは,なぜジョバンニとカムパネルラが同時に同じ気配と予知を伴った「幻嗅」を体験したのかと…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-幻の匂い(2)-

Key words:文学と植物のかかわり,源氏物語,実体的意識性,気配,三木成夫,予知 前稿では,『銀河鉄道の夜』第二次稿から登場してくる「苹果(りんご)」や「野茨」の「匂い」を,嗅覚過敏や幻嗅で説明しようとしたが十分説明しきれなかった。今回,『銀河…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-幻の匂い(1)-

Key words:文学と植物のかかわり, 苹果,野茨,ばら,共感覚,幻嗅 「匂い」が快感や不快感を誘起したり, 食欲増進やリフレッシュ効果(リラックス効果)をもたらしたりすることはよく知られている。これら「匂い」や「香り」の特質から,「匂い」は教育,…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-アスパラガスとジョバンニの家(2)-

Key words: 文学と植物のかかわり,ゴシック廻廊,火輪,教会堂,楢,三角標,積雲,天気輪の柱 前稿では,ジョバンニの家の前に植えられてある「アスパラガス」と「ケール」が,仏教だけでなくあらゆる宗教の宗派や教派の「死後の世界」を統一する「五輪塔…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-アスパラガスとジョバンニの家(1)-

Key words:アラビア風,アスパラガス,文学と植物のかかわり,五輪塔,紫のケール,真言 童話『銀河鉄道の夜』(第四次稿)には,「アスパラガス」が2回登場する。1つは,第四章の時計屋にある黒い星座早見を飾る「アスパラガスの葉」として,そしてもう…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-桔梗色の空と三角標-

Key words: 文学と植物のかかわり,薄明窮,鐘,キキョウ科,教会堂,乳液,送電鉄塔 童話『銀河鉄道の夜』(第四次稿)には,天上世界の空の色を「桔梗色」と表現している箇所が4つある。賢治は,物語の地上世界の景観に現れる空を「鋼青の空」と記載して…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-楊と炎の風景(2)-

Key words:文学と植物のかかわり,父と子の対立,農民芸術,三角標,蝎 『銀河鉄道の夜』にはたくさんの「三角標」が登場してくるが,それぞれの「三角標」に対するイメージは,物語の場面で異なる(石井,2014)。地上にある時計屋の星座早見を飾っていた…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-楊と炎の風景(1)-

Key words:アスペン,文学と植物のかかわり,パルプ工場,三角標,蝎,楊 『銀河鉄道の夜』の中で「蝎(さそり)」の「まっ赤な火」(「蝎」の逸話 )と「楊(やなぎ)の木」が一緒に登場する場面は,物語の最大の山場であり核心部分である。「楊の木」は,…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-赤い実と悲劇的風景(2)-

Key words:文学と植物のかかわり,橄欖(かんらん)の森, G.マーラー,リンゴ,聖書,タイタニック号遭難 前稿では,童話『銀河鉄道の夜』の九章「ジョバンニの切符」で登場してくる「橄欖の森」の「まっ赤に光る円い実(赤い実)」を便宜的に「リンゴの実…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-赤い実と悲劇的風景(1)-

Key words: 文学と植物のかかわり,瞳,橄欖(かんらん)の森, リンゴ,三角標,聖書 『銀河鉄道の夜』は,夢の中で主人公のジョバンニと水死したカムパネルラが銀河鉄道の列車に乗って天上(死後の世界)を旅する物語である。最初に到着する天の野原には,…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-光り輝くススキと絵画的風景(2)-

Key words: 文学と植物のかかわり,補色,リンドウ,三角点,芝草,色彩 童話『銀河鉄道の夜』において,ジョバンニたちが最初に到着する天の野原は,天上世界の中では最も美しい場所である。本稿は,前稿に引き続き,天の野原に登場する光輝く植物(ススキ…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-光り輝くススキと絵画的風景(1)-

Key words: 文学と植物のかかわり,逆光,ホイッスラー,ススキ,ターナー 『銀河鉄道の夜』では,夢の中でジョバンニとカムパネルラが黒い丘から銀河鉄道の列車に乗り込んで天上世界に旅立つ。最初に到着する天の野原には,紫色の細かな波をたてたり虹のよ…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-星座早見を飾るアスパラガスの葉(2)-

Key words:文学と植物のかかわり,ほんとうの葉(鱗片葉),偽りの葉(仮葉枝),三角標,きのこ 前稿に続き,星座早見を飾るアスパラガスの葉が,観賞種であるアスパラガス属の「仮葉枝」ではなく,食用のアスパラガスの「三角形の鱗片葉」であるという私…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-星座早見を飾るアスパラガスの葉(1)-

Key words:アスパラガス,文学と植物のかかわり,ほんとうの葉(鱗片葉),偽りの葉(仮葉枝),三角形,星座早見,真果,偽果,トマト,リンゴ 『銀河鉄道の夜(四次稿)』四章の「ケンタウル祭の夜」に「青いアスパラガスの葉」が登場する。主人公のジョ…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-クルミの実の化石(2)-

Key words: 文学と植物のかかわり,ほんとうのこと,かはらははこぐさ,押し葉,プレシオスの鎖,曼荼羅 前報では,ジョバンニたちが化石発掘現場で拾った「くるみの実」の化石がオオバタグルミであった可能性について言及した。本稿では,なぜ化石の発掘現…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-クルミの実の化石(1)-

Key words::文学と植物のかかわり,バタグルミ,第三紀鮮新世泥岩層,プリオシン海岸 『銀河鉄道の夜』の第三次稿(1925年秋以降~1926年頃)と第四次稿(1931~1932年頃;最終稿)の七章「北十字とプリオシン海岸」で,天上を旅するジョバンニとカムパネル…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-ススキと鳥を捕る人の類似点-

Key words : あってはならない感受性,文学と植物のかかわり,常不軽菩薩,雑草,厄介者 『銀河鉄道に夜』の天上に最初に登場する植物は,銀河鉄道の線路際(鉄道敷)あるいはその周辺で銀河の青白い光を浴びて銀色に光輝く「ススキ原」の「ススキ」である。…

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』-聖なる植物(3)-

Key Words:文学と植物のかかわり,源氏物語,法華経,河原なでしこ,くるみ,西域 前報(聖なる植物(1)(2))では,『銀河鉄道の夜』の天上に登場する植物には段階性があり,植物は「俗」から「聖」の順序で配置されていることを報告した。「聖」とし…