宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

童話『やまなし』考 -冬のスケッチ(創作メモ)にある「みずのそこのまことはかなし」とはどういう意味か (第1稿)-

前稿で異稿「冬のスケッチ」に残されていた童話『やまなし』の創作メモ「さかなのねがひはかなし/青じろき火を点じつつ。//みずのそこのまことはかなし」の最初の1行と2行目は「さかな(賢治)のクラムボン(恋人)を水底(花巻)から連れだそうとした…

童話『やまなし』考 -冬のスケッチ(創作メモ)にある「青じろき火を点じつつ」とはどういう意味か (第2稿)-

賢治は恋人と一緒かどうかは定かではないがアメリカへ行こうとしていたのは事実である。賢治と同郷の関徳彌(登久也)が,賢治の教え子である長坂俊雄(旧姓は川村)からアメリカ行きの話を聞いている。大正11年(1922)から12年頃に,賢治が「おれはアメリ…

童話『やまなし』考 -冬のスケッチ(創作メモ)にある「青じろき火を点じつつ」とはどういう意味か (第1稿)-

前稿で異稿「冬のスケッチ」〈七-三〉に残されていた童話『やまなし』(1923.4.8)の創作メモ「さかなのねがひはかなし/青じろき火を点じつつ。//みずのそこのまことはかなし」の最初の1行「さかなのねがひはかなし」は,破局に向かっているときの恋…

童話『やまなし』考 -冬のスケッチ(創作メモ)にある「さかなのねがいはかなし」とはどういう意味か (第2稿)-

青年が銀河鉄道の列車に乗車してきたとき,青年の腕には黒い外套を着た眼が茶色の可愛らしい〈女の子〉がすがっていた。そして,青年は船が氷山と衝突したとき〈女の子〉を救命ボートに乗せられなかった理由について話をする。同時に,青年は〈女の子〉を助…

童話『やまなし』考 -冬のスケッチ(創作メモ)にある「さかなのねがいはかなし」とはどういう意味か (第1稿)-

童話『やまなし』(1923年4月8日新聞発表)の第一章「五月」には鉄色の〈魚〉と〈クラムボン〉の悲恋物語が書かれている(石井,2021a)。鉄色の〈魚〉には賢治が,川底に居る〈クラムボン〉には詩集『春と修羅』に登場してくる賢治の恋人が投影されている…