宮沢賢治と橄欖の森

賢治作品に登場する植物を研究するブログです

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

童話の「やまなし」の実が「横になって木の枝にひっかかってとまる」とは何を意味しているのか

童話『やまなし』の第一章「五月」は,谷川の川底に先住していた〈クラムボン〉とあとから谷川にやってきた〈魚〉の悲恋物語りである。〈魚〉は〈かはせみ〉によって谷川から連れ出され,「樺の花」は散って川下へ流れさった。〈魚〉には賢治が,〈クラムボ…

童話『やまなし』に記載されている「うそ」と「ほんとう」を分けてみて明らかになること (第3稿)

第1稿と第2稿で童話に記載されている「うそ」と思われることを列挙した(第2表)。本稿では「ほんとう」と思われることをあげてみる。また,後半部で「うそ」と「ほんとう」を分けて明らかになったことについて述べてみる。 2.「ほんとう」と思われるこ…

童話『やまなし』に記載されている「うそ」と「ほんとう」を分けて明らかになること (第2稿)

引き続き,自然現象としては起こりえないこと,あるいは「うそ」と思われることについて列挙してみる。 5)「五月」に〈魚〉が〈クラムボン〉の廻りを行ったり来たりしたとき,兄の〈蟹〉が「何か悪いことをしてゐるんだよとつてるんだよ」と言ったこと 兄…

童話『やまなし』に記載されている「うそ」と「ほんとう」を分けて明らかになること (第1稿)

童話『やまなし』(1923年4月8日新聞発表)には,自然現象としては起こりえないこと,あるいは「うそ」と思われるものがたくさん記載されている。本稿ではそれらを列挙して,賢治がなぜそのような「うそ」を童話に組み込んだのかを考えてみたい。ただし,…

童話『やまなし』考 -氷のついた「ヤマナシ」(Pyrus pyrifolia)の実は水に落ちて沈み,浮かび,再び沈む-

「ヤマナシ」(Pyrus pyrifolia;ピルス・ピリフォリア)の落果直後の新鮮なものは,コップの水に落とすと沈むことはすでに報告した(石井,2022a)。凍らせた果実を使ったりもしたが沈むだけであった。その後,落果してからしばらく放置し干からびさせたも…